野上弥生子の文章
■今日の文章
このごろは暑いため短い厚司(あつし)になっているので、
下からだとひと目に見通される三吉のすらりとした両脚(あし)や、
青いさるまたをはいた、まだあんまりやせもしない娘のような
むっちりした丸い股(もも)は、八蔵の残忍な興味をそそった。
■読後ノオト(これは解説ではありません)
少し説明を要するかもしれません。
この文章は野上弥生子氏の「海神丸」という小説からの引用です。
引用個所は、「海神丸」乗組員の八蔵が、人肉食いを妄想する
シーンです。
たまたまこの文章の解説を見つけたのでご紹介します。
文章の読み方の参考になると思います。
食欲と性欲とが未分化になって合体し、暴力性を内在させた瞬間に
人間は「鬼」になる。
そういう心理過程を、一つの文章の中に結晶させている。こういう
表現が野上弥生子の最大の魅力である、と。
このコメントをどう感じられるか、については、皆さんにおまかせ
するとして、
作家が、何をどう表現しようとしているのか、について知るには、
なかなか良い事例であると思います。
この作品で、野上弥生子は小説家として成熟したと評された
と言います。


