失われた時を求めて プルーストの文章
■今日の文章
少したって、陰気に過したその日と、明日もまた物悲しい一日で
あろうという予想とに気を滅入らせながら、私は無意識に、お茶
に浸してやわらかくなったひと切れのマドレーヌごと、ひと匙の
紅茶をすくって口に持っていった。
ところが、お菓子のかけらの混じったそのひと口のお茶が口の裏
にふれたとたんに、私は自分の内部で異常なことが進行しつつ
あるのに気づいて、びくっとしたのである。
素晴らしい快感、孤立した、原因不明の快感が、私のうちにはい
りこんでいた。
■読後ノオト(これは解説ではありません)
この文章を含む巨大な小説に、4年間にわたり格闘し、とうとう
読了することができなかった記憶がある。
この小説に取組む時間が「失われた時を求める」行為に違いない
と当時は思ったものである。
マルセル・プルースト


