トマス・モア「ユートピア」
■今日の文章
金や銀でだいたい彼らは何をつくるかといえば、実に便器である。
汚い用途にあてる雑多な器具である。
さらに奴隷を縛るのに用いる足枷、手枷の鎖である。
そして最後に、罪を犯したため破廉恥漢として皆に蔑まれている
人間が耳につける耳飾りであり、指にはめる指環であり、首にまく
鎖であり、さては頭にまく鉢巻である。
かようにしておよそ考えられるあらゆる手段方法を通じて、
金銀を汚いもの、恥ずべきものという観念を人びとの心に植つけよう
とするのである。
■読後ノオト(これは解説ではありません)
この文章を書いた人物は、当時の社会的地位としては要職を歴任した
にもかかわらず、叛逆罪に問われ処刑される、というとても数奇な
人生を送りました。
この文章が出てくるのはトマス・モアの「ユートピア」という作品で、
彼は理想的な社会を描くことで時のイギリス社会を痛烈に批判した
とされます。
それにしても、取り上げた文章をどのようにお読みになるか?
仕掛ける側に自覚があるかどうかに関わらず、わが国にも、この文章で
指摘されている事柄は至るところにあるのではないか、と思います。
物事の見方とか、自ら考える、ということについて、よほど自覚的で
あろうとしなくては、大変まずいことである、と思っています。


