考えるヒント2より 小林秀雄
■今日の文章
二度と還らぬ過去の人に出会うには、想像力を凝らして、こちらから
出むかなければならないのだし、この想像力の基体として、二度と
還らぬ自分の現在の生活経験に関する切実な味い以外に、何もありは
しないのだ。
(中略)
歴史の意味という呪文を唱えれば、歴史は向うから、こちらに歩いて来る、
と信じているなら、それは科学の仮面を被った、原始的呪術の名残りに
過ぎぬと言われても仕方があるまい。
(中略)
友を得る為には、友を自分の方に引き寄せればいい、そんな道が、友を
失う道に過ぎないとは、生活経験に基づく知恵には、はっきりした真理
である。
この種の知恵を現代風の歴史理解の型が忘却しているのを、常識は
笑ってもいいのである。
■読後ノオト(これは解説ではありません)
かなり凝った文章であるが、個人的に好きな文章である。
小林秀雄「徂徠」より。


