謀叛論 徳富蘆花の文章
■今日の文章
諸君、幸徳君らは時の政府に謀叛人と見なされて殺された。諸君は、
謀叛を恐れてはならぬ。謀反人を恐れてはならなぬ。自ら謀反人と
なることを恐れてはならぬ。新しいものは常に謀叛である。
「身を殺して魂を殺す能わざる者を恐るるなかれ」。
肉体の死は何でもない。恐るべきは霊魂の死である。
人が教えられたる信条のままに執着し、言わせらるるごとく言い、
させらるるごとくふるまい、型から鋳出した人形のごとく形式的に
生活の安を偸んで、一切の自立自信、自化自発を失う時、すなわち
これ霊魂の死である。
我らは生きねばならぬ。生きるために謀叛しなければならぬ。
■読後ノオト(これは解説ではありません)
なかなか檄高した感じが良い文章です。
この文章は似非革命家のアジテーションではありません。
目ざとい方は冒頭の「幸徳君」という言葉を見逃してはいないこと
でしょう。もちろん、幸徳とは幸徳秋水のことです。
1910年に起きた大逆事件の首謀者として、時の権力にでっち上げら
れた幸徳秋水は、無罪のまま処刑されたとされています。
この処刑の日の八日後に、徳富蘆花は講演で、上記の内容を語った
とされています。
当時の空気を想像するに、これだけの内容を語ることにも大変な
覚悟があったではないかと思います。


