赤?それとも黒? スタンダール
■今日の文章
さて、諸君、小説というものは大道に沿うてもち歩かれる鏡のような
ものだ。
諸君の眼に青空を反映することもあれば、また道の水溜りの泥濘を
反映することもあろう。
すると諸君は、鏡を背負籠に入れてもって歩く男を破廉恥だといって
非難する!
鏡は泥濘を映し出す、そこで諸君はその鏡を非難しようというんだ!
■読後ノオト(これは解説ではありません)
事実は小説より奇なり、という言葉あります。
そもそも小説という形式が登場したとき、書かれたものと現実との
混乱が生じた時期があり、その後、小説が事実を越えるものでは
ない、という冷静な理解が生まれたのでしょう。
小説を読まない人には何のことやら馬鹿馬鹿しい話なのですが
小説が生まれた時代にはそういう話もあった訳で・・・。
この文章はスタンダールの手によるものです。
まだまだ小説という形式が固まらないどころか、小説とはこういうものだ
と世に知らしめた一人として、スタンダールがいると言えます。
だから彼は書き手として、小説の裏側というか、真実を知っていた訳で
何も知らない読者に対して苦虫を潰したような顔をして、これを書いて
いたのではないか、と想像したりします。


