金子光晴の文章
■今日の文章
パリから出かけてみると、ブリュッセルは、こじんまりしていながら、
どこか淋しい影のある都会で、それはやはり北欧という感じをふかく
印象づける。
殊更、冬の日は短く、弱々しく、それでも暖か味のある淡い陽ざしが、
中世からつづくブラバン侯国の古風な石の建物の凹凸を、つつましく
浮きあげている。
小柄で、品のいい町で、盛り場にいても、羽目を外した少女のいじらしい
悔恨のような、動機の音がききとれるほど、しずかな街の気配である。
■読後ノオト
(これは解説ではありません)
何事につけても群れたがる日本人のなかで、全く群れることなく
強い個性を発揮したことはこの文章からも良く分る。
無防備な憧憬など微塵もない、一個の個性が淡々とブリュッセルを
描写している。
この詩人は日本の詩壇においても特異な存在だったことを思えば、
当然のことなのでしょう。
この文章は、詩人金子光晴によるものです。


