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中谷宇吉郎  科学者の書く随筆

■今日の文章


住みついてみると、北海道の冬は、夏よりもずっと風情がある。
風がなくて雪の降る夜は、深閑として、物音もない。


外は、どこもみな水鳥のうぶ毛のような新雪に、おおいつく
されている。


比重でいえば、百分の一くらい、空気ばかえりといってもいい
くらいの軽い雪である。


どんな物音も、こういう雪のしとねに一度ふれると、すっぽりと
吸われてしまう。


耳をすませば、わずかに聞こえるものは、大空にさらさらと
ふれ合う雪の音ぐらいである。


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