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柄谷行人 商業資本の存立構造

■今日の文章


簡単にいえば、商業資本は、ある地域で安く買ったものを、
別の地域で高く売ることのよって成立している。


しかし、商人は詐欺師ではないし、不等価交換をしている
のではない。


一つの商品の「価値」は、内在的にあるのではなく、他の
すべての商品との価値関係としてあるにすぎない。


だが、貨幣形態をとると、それは数量的に表示される。


同じ商品が一地域で安く、他の地域で高いのは、それぞれの
地域において、他の商品との関係がちがうということ以外で
はない。


ところが、この関係が貨幣形態によって消去されると、まる
でその商品に単独に内在的価値が存在するかのようにみえる。


すなわち、関係の体系としての差異が、貨幣によって、量的
な差異としてあらわれるのだ。


(中略)


貨幣形態によって量的に変形されたとき、この体系としての
差異は、一商品のの価格差としてあらわれる。


商業資本はこの価格差に依存する。もちろんそのためには、この
二つの価値体系が、相互に隔離されているのでなければならない。


それゆえに、商業資本は、互いにへだたった相違なるシステムの
中間にのみ存在する。


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■解説

この文章を含む、文庫本にして約140ページの文章を繰返し
読んだ経験がある。


内容は決して易しくはないのだが、読むたびに、一種「知の覚醒」
とも言うべき経験を求めて読み直した。


これだけの文章を書く人が日本にもついに登場したのか、と感心
するとともに、「畏怖する存在」になった。


彼の仕事を読んだからと言って、実利的には何も得られないかも
しれない。


しかし、私たちの知性を磨く方法の一つとして難しい内容を明晰に
書き上げた作品をじっくり読むという方法がある。


その対象として、彼の作品は私にとってなくてはならない作品だった
と言える。


ちょっと趣味が走ってしまったけれど、興味があれば読んでみて
下さい。


著者 柄谷行人 「マルクスその可能性の中心」


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