植村直己 2月13日の無線交信を最後に・・・
■今日の文章
いつも前進があるだけだった。失敗したら逃げ道がないと思った。
旅の中止は、私が自分なりに積み上げてきた実績を、一挙にフイに
することだ。
そうしたらら、じぶんはもう何をしたらよいか分らなくなる。最初
の屈辱の中に戻るだけだ。
人間の社会の五里霧中をさまようより、この大自然のガスの中の
ほうが、私にとってはずっと身に合っているのだ。
いやいや、この濃密なガスの中でなら、私にも生き延びる道はある
のだ。
気が狂いそうな単調さに耐えぬき、弱音を吐きたがる自分に打ち克つ
以外にはない。
進む事、ひたすら前に進むこと。
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■解説
今、読むと、途中で涙が溢れてきて、文字が霞んでしまう。この人は
何て人なんだ。
絶対に今も何処か前人未到の大自然の中を、前え、前へ、前進している
に違いない。
この人ならありそうではないか?私は心の深い部分で彼の生還を信じて
いるのかもしれない。
今、読むと、そういう想像を掻き立てる何かが伝わってくると思うのは
私の深読みだろうか。
植村直己
世界初の5大陸最高峰(モンブラン、キリマンジャロ、アコンカグア、
エベレスト、マッキンリー)登頂者であり、アマゾン河約6000キロの
イカダ下りや、北極圏12000キロの単独犬ゾリ行、北極点犬ゾリ単独行
などの偉業を成し遂げた、日本を代表する冒険家。
84年に世界初のマッキンリー冬期単独登頂成功後、2月13日の無線交信
を最後に消息を絶つ。


