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田中康夫 なんとなくクリスタル

なんとなく、で良い訳ありませんよね、知事!


■今日の文章


淳一と私は、なにも悩みなんてなく暮らしている。


なんとなく気分のよいものを、買ったり、着たり、食べたりする。
そして、なんとなく気分のよい音楽を聴いて、なんとなく気分の
よいところへ散歩そも行ったり、遊びに行ったりする。


二人が一緒になると、なんとなく気分がいい、クリスタルな生き方
ができそうだ。


だから、これから十年たった時にも、私は淳一と一緒でありたかった。
その時、淳一は、どんなミュージシャンになっているだろうか。


単なるキーボード奏者としてだけでなく、アレンジャーとしても、
プロデューサーとしても、一流の仕事のできる人になっていてほしい。


私は、まだモデルを続けているだろうか。
三十代になっても、仕事のできるモデルになっていたい。


<三十代になった時、シャネルのスーツが似合う雰囲気をもった女性
になりたい>


私は、明治通りとの交差点を通り過ぎ、上り坂になった表参道を走り
続ける。


手の甲で額の汗をぬぐうと、クラブ・ハウスでつけてきた、
ディオリッシモのさわやかなかおりが、汗のにおいとまざりあった。

【作者による注】

ディオリッシモ
すずらん、ジャスミンなどを調合したフローラル調のディオリッシモは、
汚れなきミセスや、清楚なお嬢さんにふさわしいとされています。


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■解説


ちょっといつもより長めに引用させて頂いた。


この文章を誰が書いたのか、ご存知だろうか?
おそらく名前を出せば、殆どの方がごぞんじだろうと、思う。


この週末までは、注目の人のひとりだから。


この文章は、確か、一橋大学在学中に出筆され、この作品で
この人は、一躍注目の人になった。。


注目を浴びる、と言う点で天与の才を持っているのかもしれない。


そろそろもったいぶるのは止めようか?
この文章は「なんとなくクリスタル」という小説の最後の部分。


最後の最後に、作者による注釈を載せたのは、引用した例のような
【注】が、全体で442個あり、選考委員を戸惑わせたという
エピソードがある。


そう、この小説を書いたのは、新党の党首になった、長野県知事
田中康夫その人なのです。

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