D.H.ロレンス 空に突き上げる潮のように!
空に突き上げる潮のように!
■今日の文章
翌日彼女は森へ出かけた。
曇った、静かな午後で、暗緑色の山藍(やまあい)が
榛(はしばみ)の矮林の下に拡がっていた。
すべての樹木は音も立てずに芽を開こうとつとめていた。
巨大な槲(かしわ)の木の樹液の、ものすごい昂(たか)まり。
上へ上へと騰(あが)って芽の先まで届き、そこで血のような赤銅色の、
小さな焔(ほのお)かと思われる若葉となって開こうとする力を、
彼女は今日は自分のからだの中に感じた。
それは上へ上へと脹れあがり、空に拡がる潮のようなものだった。
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■解説
山藍(やまあい)や榛(はしばみ)は植物の名前です。
矮林(わいりん)は背の低い林という意味です。
この文章を味わうのにこんな細かいことが分からなくても
読み飛ばしてしまって構わない、と個人的には思います。
注目したいのは、この文章を書いている作者の視点です。
植物の中の「激しい」とも言える生命力の表現の仕方。
そして、その突き上げるようなエネルギーを、
空に向かって吹き上げるような潮として、
女性の体の中にも感じさせようとしています。
分かりますか?
正直、ちょっとHな感じですね。
疼く(うずく)ような感じを、こんな例えで、
表現しているんですね。
この文章は、伊藤整氏による翻訳で「チャタレイ裁判」として
有名になりました。
そう、D.H.ロレンスが書いた「チャタレイ夫人の恋人」から
の一節です。


