河盛好蔵 傷つくことを怖れない!
傷つくことを怖れない!
私は青年も自らの過失によっていたたかに傷つくことを、
また傷つくことを恐れないことを希望したいのである。
もし彼らの追及する目的が大きく高い場合には、彼らの
流す血は実に美しく、そのような過失は断じて悔恨を伴う
ことはない筈である。
それは若気のあやまちなどではもちろんなく、青春時代の
誇りということができよう。
しかしながらもし彼らが、たとえ自ら意識しないにしても、
他人を傷つけるばかりであって、自らは何の犠牲も払わない
としたら、その記憶は終生彼らを苦しめ、それを思い出す
たびに穴があれば入りたい悔恨を起こさしめるに相違ない。
この文章は、フランス文学研究者、河盛好蔵さんの文章です。
河盛さんと言えば、1979年に発表された 「パリの憂愁」は
ボードレールの生涯を描いた大作で、日本人によるボードレール
の評伝として、熱心に愛読した時期があります。
河盛さんの活動は大変旺盛で、97年に京大では最高齢の95歳で
文学博士号を取得するなど、何かと話題の多い方でした。
きびきびとした、歯切れの良い文章を味わって頂ければ、幸いです。


