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ミシュレ あまねきため?

あまねきため?

■今日の文章

三人目のガールフレンドが死んだ半月後、僕はミシュレの「魔女」
を読んでいた。

優れた本だ。そこにこんな一節があった。

ローレンヌ地方のすぐれた裁判官レミーは八百の魔女を焼いたが、
この『恐怖政治』について勝ち誇っている。

彼は言う、『私の正義はあまりにあまねきため、先日捕えた十六
名はひとが手を下すのを待たず、まず自らくびれてしまったほど
である。

私の正義はあまりにあまねきため、というところがなんともいえず
良い。


■解説

ミシュレとは19世紀のフランスを代表する非常に情熱的な歴史家
のことで、その中でも「魔女」は代表作と言える。

その翻訳の一部を引用したこの一節は、初めて読んだ時、少し笑っ
てしまった。

私も「ミシュレ」を同じ翻訳本で読んだことがあり、同じ個所で
「?」と思ったからである。

この一節を読んだとき、そのことを思い出し、嬉しいやら、照れく
さいやら、妙な感じだった。

なぜならこの一節は、村上春樹氏の処女作「僕の歌を聴け」の一節
だったからである。

彼の文章の引用の仕方には、他の人の真似のできないオリジナリティ
がある。

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